2013年12月15日日曜日

あの街の名は知らない

発展途上な田舎の街

海岸線は黄土色に侵食されたような夕暮れ

開発途中の奇抜なデザインのビルのシルエットは

止まったクレーンや剥き出しの骨組みがまるでベクシンスキーの絵画の中に迷い込んだ気持ちにさせる。

チェーン店の定食屋の向かいの席には

死んだはずの祖母がまだ若々しく

よそ行きの格好で僕と会話を続ける。

隣の席には工事現場の作業員

祖母は彼らの分の唐揚げとライスのおかわりをオーダーする。

作業員の彼らは無愛想だが照れ臭そうに一礼をし新たにそのテーブルに運ばれたライスをろくに噛もうともせず飲み込む。

僕の左側に座った1番大きな作業員がそれだけでは物足りなかったのか

僕と祖母のテーブルの唐揚げにも手を伸ばす

彼の汚れたジャケットの右腕が我々の食事中の視界を遮り

僕は少しムッとしたがそれを見た祖母が優しい顔で澄んだ瞳をこちらに向けながら無言のままこう教えてくれた。

"勢、優しさとは時に誤解を招くのよ
思いやりに私たちの期待は要らないの
分け与える人でいなさい
あなた自身を誇れる人でいなさい"

確かに僕の祖母はそういう人だった。