振り返る必要はない。
戦場のピアニストに出てくるような
荒廃とした街を背に
自分の過ちが
そこら中に散らばっている。
それは黒いプラスチックで出来た縫いぐるみの目
それは日傘をさした貴婦人の肖像画
粉々になった窓ガラスと
黄色く澱んだビル風が
足元から全身へと
巨大なカタツムリが這うように
僕を包み込む。
それは思い出の欠片
それは記憶の中で作られる出来事
今を生きる なんて言葉は嫌いだ。
本当は振り返りたくないだけなんだ。