昔、派遣のバイトで
カイジに出てくるような埋立地
おばけのような高層ビル群の中で
働いたことがある。
19歳そこそこだった僕は
逃げ出したかった。
作業はベニヤを運ぶくらいの簡単なものだったが
何処から来たかもわからないよく喋る青年と班分けされ
ひと気の全くない恐らくオフィスか何かの巨大な一室から
逃げ出したかった。
無人とは有害だ。
(正確にはそのよく喋る彼と二人っきりだったが)
僕の知らないところで世の中が建設されている虚無と
無機質で等間隔に宿る蛍光灯の色だけが
人間味を漂白してしまいそうで
怖かった。