印藤勢の奇録
2014年8月22日金曜日
届いても 触れない モノ
忘却したはずの人
浴槽に沈んだ
小さな小さな鍵を手探りで
つかみ取ろうとしている。
その鍵の表面のざらついた手触り
オモチャの金庫がお似合いな
あの頼りない薄さは
浴槽を満たす涙の海中を
羽根のように舞っている。
そっと僕は両手ですくい上げてみる
すぐに溶けてなくなった。
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